妊婦さんやその家族が気をつけないといけないことがあまり知られていない病気

風しんをはじめ、HIVクラミジアなど妊娠中に気をつけなければいけない感染症は結構多いです。
そのほとんどは国から検査が義務づけられているため、妊娠検診を定期的に受けていればその過程で検査をしてくれ、妊娠中の健康保険の補助制度の対象になるため費用負担も少なくてすみます。ですが妊娠中に必須になっている検査項目以外にも注意が必要な感染症があり、危険性があまり知られていない現状があるのでまとめてみました。

 

 

サイトメガロウィルス

聞き慣れない名前ですが昔からあるウィルスで、かかったとしても健康であればほとんど症状がでず軽い風邪かな?くらいの症状で気づかないうちにかかっている人がほとんどです。ただし妊娠中にはじめてかかった場合に赤ちゃんに難聴や脳の発達などに障害が出る可能性があります。

現在のところ予防接種ワクチンはありません。
近年、子供時代からの衛生状態がよくなったことで免疫がないまま大人になった人が増えているため、このウィルスによる障害をもった子供も増加しています。サイトメガロウィルスは主に唾液や尿に多くふくまれており、二人目の子供を妊娠したときに上の子供の世話をしていて感染するケースが多いようです。任意の血液検査で免疫があるかどうかを調べることができます。もし抗体をもってないことがわかった場合おむつをかえた後はしっかり手洗いをする、子供とスプーンや食器などを共用しない、食べ残しを食べないなどの対策が必要です

解説)妊婦さん注意!サイトメガロウイルス | NHK「かぶん」ブログ:NHK

 

トキソプラズマ

マラリアと同じく寄生虫の一種で、目に見えないくらいの大きさです。妊娠前に感染し免疫がある場合は問題ありませんが、妊娠中にはじめてかかった場合胎盤をつうじて赤ちゃんにも感染し脳や目に障害がでる可能性があります。かかっても軽い風邪のような症状しかでず、気づかないうちに感染していることがほとんどです。人から人へは感染せず、主な感染経路は生肉生魚や猫の糞、土(※)です。

現在のところ予防接種ワクチンはありません。

任意の血液検査で免疫があるかどうかを調べることができます。血液検査で陽性で、妊娠6ヶ月以上前にかかっているようであれば抗体があるため問題ありません。

妊娠時 寄生虫 "トキソプラズマ"の危険 | 健康・医療 | NHK生活情報ブログ:NHK

 

トキソプラズマの抗体があれば猫の糞に関しては問題ないですが、ユッケやレバ刺し、お刺身、殺菌されてない乳製品などには他にも有害な細菌や寄生虫がいるので、普段より抵抗力が弱まっている妊婦さんは避けた方がいいです。土をいじるガーデニングなども同様の理由で気をつける必要があります。
猫からトキソプラズマが伝染するのは、トキソプラズマに感染した猫の「伝染初期に排出された糞」からだけです。産まれてこのかた室内飼いをしている猫の場合は感染していることはほぼないと考えていいと思います。「妊婦=猫だめ絶対」というのはいきすぎた反応です。

 

水痘

いわゆる水疱瘡です。メジャーな病気なので子供の頃にかかったり予防接種で抗体をもっていることがほとんどですが、経年によって抗体がなくなっている可能性もあります。妊娠20週未満に感染すると流産の可能性や赤ちゃんに神経障害や先天奇形の障害が出る可能性があります。妊娠後期にかかるとお母さんの症状が重く、赤ちゃんも産まれた後に高確率で発症し命の危険があるレベルで重症化してしまう可能性があります。任意の血液検査で抗体をもっているかどうか調べることができます。

 

成人水痘-妊婦の水痘などを中心に

■ヒトパルボB19ウィルス(伝染性紅斑)

幼少時に感染しやすくほっぺたがあかくなることから俗にリンゴ病とよばれる病気です。大人が感染した場合はほっぺたが赤くならず、ただの風邪だと思っていて実は感染していたという場合が多いようです。過去にかかっていれば抗体があるため問題はありませんが、妊娠中にはじめてかかった場合に胎児貧血となりむくみ(水腫)の症状が現れ、最終的に死亡する可能性もあります。抗体保有率40%といわれ抗体を持っていない人の方が多いので注意が必要ですが、現在のところ予防接種ワクチンはありません。感染力はそれほど高くないようですが、感染者からの咳やくしゃみなどの飛沫感染をするためできるだけ感染者に近づかないことが重要です。任意の血液検査で抗体をもっているかどうか調べることができます。

東京都感染症情報センター » 伝染性紅斑 Erythema infectiosum

■麻しん

いわゆるはしかです。メジャーな病気なので子供の頃にかかったり予防接種で抗体をもっていることがほとんどですが、経年によって抗体がなくなっている可能性もあります。感染力が強く抗体がない場合にはしか患者に接触するとほぼ100%感染してしまいます。妊娠時に感染した場合、風しんのように赤ちゃんに障害がでることはないですが、流早産を引き起こす可能性が高くなります。任意の血液検査で抗体をもっているかどうか調べることができます。

 

麻しん(はしか)に関するQ&A|厚生労働省

流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふく風邪

いわゆるおたふく風邪です。メジャーな病気なので子供の頃にすでにかかっているか予防接種で抗体を持っている人が多く、抗体があれば再度かかる心配はほぼありません。妊娠時に感染した場合、風しんのように赤ちゃんに障害がでることはないですが、流産や胎児死亡率が高くなります。任意の血液検査で抗体をもっているかどうか調べることができます。

おたふく風邪(流行性耳下腺炎)の症状と原因 [子供の病気] All About

 

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近年の風しんの大流行により、妊娠時のリスクがメディアでも大きく取り上げられたため知っている人も多いかとおもいますが念のため。

風しん

妊娠初期ほど感染すると赤ちゃんの目や耳心臓に障害がでる風疹症候群の危険性があります。すでに一度かかっていて免疫があれば再度かかる恐れはないのですが、昔かかったとおもっていたけど実は風疹じゃなかったとか経年によって免疫がなくなっていたりということもあるので注意です。

風疹の予防接種が学校での集団接種でなかった世代(昭和54年4月2日~平成7年4月1日生まれの男女、昭和54年4月1日以前生まれの男性)が特に抗体をもってない可能性が高いようです。ここ数年の流行で地方自治体によっては大人のふうしん予防接種への補助制度を実施しているので妊娠前に予防接種を。血液検査で抗体があるかどうか調べることができ、妊娠初期に産院でうけることが義務づけられている血液検査の項目に含まれています。

 

NHK NEWS WEB ストップ風疹 ~赤ちゃんを守れ~

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まとめ

任意で受けられる検査に関しては産院ごとの方針にかなり左右されるようで、検査を熱心に推奨しているところもありますが、任意の検査項目=レアケースという認識であり費用負担額もかさんでしまうため、病院からはごく簡単な説明のみで受けるかどうかの判断はおまかせしますというところの方が多いようです。

しかし近年衛生状態が向上したことで、皮肉にも抗体をもたないまま過ごしてきた人が増え、抵抗力が弱る妊娠時に感染してしまうリスクが以前よりあがっているという現状があります。

もちろん妊娠中に上記の感染症にかかると100%胎児に影響がでるというわけではありません。神経質になりすぎてストレスをかかえるのは妊婦にとってよくありませんが、普段の生活でどんなことに注意すべきかという正しい知識と、早期の治療開始でリスクを防げることもありますので妊娠中に感染の疑いがあればすぐに医師に相談するという姿勢は必要です。検査は今かかっているかどうかの他に、抗体をもっているかどうかの調査でもあり、妊娠生活中になにを気をつければいいかの目安になります。心配事をへらすためにも検査をうけることをお勧めします。

幼少期にかかりやすい感染症は、妊婦への感染ルートが子供からということが多いので、第二子以降の出産身近に小さい子供がいる人(育児関係の仕事をしている人など)ほど気をつけないといけないのですが、意外とそのリスクが知られていません。妊婦のみがいくら気をつけていても、家族内に感染者がいると避けられない脅威となってしまうので家族の理解と協力が必要です。

妊娠中に検査で抗体がないことがわかったとしても予防接種を受けることができないので、できるだけ妊娠前に抗体を獲得する(※)ようにしておいたほうがよいでしょう。

※妊娠を希望する人は予防接種後2ヶ月は避妊が必要といわれますが、抗体を身につけるのに時間がかかることもあるので早めの接種を。